【人】 虹彩異色症の猫[ 澤邑が勧められるままに露店の品を覗き込むと>>34、肩口に前足をついていた猫はそのまま背中へ乗りかかろうとしたのを捕まり、腕の中へ仰向けに収められた。 猫は散歩慣れのためか今更人怖じはしないが、露店の店主が老人の腕の中にいる猫を覗き込むことがあれば、仮面の様子がめずらしいのか狐の面をじっと見つめている。赤子のように抱えられた猫のおかしな様子といえば、腹が剃り上げられ白い毛の中に淡桃色の地肌を晒していることだ>>0:10。 品定めにあれやこれやと飼い主と店主が言葉を交わす間、店先に吊り下げられた蜉蝣の玩具に目を留め手を伸ばす。生憎短い手足は届かない。届かないのが悔しいのか腕の中で手足を振り回している。 毛糸や毛玉も転がせば気を惹くのかもしれないが、今はゆらゆらと動く虫の玩具に執心のようだった。 手土産を詰めた紙袋を腕に、今度は猫は路面に下りて自分の足で歩いている。 澤邑の独り言ち>>37に相槌こそ打たないが、自分に話し掛けてあるのが当然のように顔を見上げている。 甘いものは食べないが、人が食しているものはやたらと欲しがるため餡のひと舐めくらいはしたことがあるかもしれない。本当にひと舐めして満足したのかそれだけだ。 許可の出る前に長椅子の上に早々飛び乗り、やはり売り子の仮面に身を強張らせて視線を留めている>>39。] (45) 2022/10/02(Sun) 22:19:02 |