【人】 風紀委員 普川 尚久>>41 >>a36 柏倉 冬が近づくそこは、美しさとは程遠い 灰色の海 だった。海水浴にも向かない、綺麗な砂浜とも言えずコンクリートブロックは転がる。 防波堤は苔生していて、映像で見るような“海”には程遠い。 ほど遠いからこそ、本当に辛い時にはここに来た。 ほど遠くあっても、海の冷たさはいつも変わりなかった。 俺達には。 「いつ来ても辛気臭いな、ここ」 最も綺麗なら、自転車程度で来れる距離の海だ。 学生がたむろわないはずがない。けれど、 真逆の方向にはもう少し綺麗な防波堤があるから、 “灰色”の方に来るのは余程のモノ好きくらいだ。昔から。 「進路さぁ、お前どうするか決めてる?」 何一つ、今までの自分の努力は振り返ってはくれなかった。 形一つ、影さえもなくそれは消えて行ってしまい、 あの日、あの頃の俺達はどこに居てもただ途方に暮れていた。 そんな場所で、もしかしたらを込めて、明日を語るのを。 お前は呆れるだろうか。それとも笑うだろうか。 でも、聞いてくれるなら俺はどれでも良いと思っている。 道はまだ続いていて、相手と同じ道を選ぶのは淡い期待か。 (45) 2021/11/10(Wed) 4:24:25 |