[ 澤邑が長椅子に腰掛けると
>>40、紐の許す限りあたりを歩きまわったり、足元で腹の傷を舐めたりしていた。石畳とはいえ長雨の後であるから、帰ったら身体を拭いてやらなければならないかもしれない。
すん、と鼻を鳴らすと澤邑の膝の上に飛び乗った。いつものおやつだ。硝子の瓶に収められているから匂いなぞある訳ないのに、既にその容器の形を覚えているのか、蓋を開ける前から手の中にある瓶に鼻を押し付けてはふんふんと嗅ぐ。掌の上に出された肉の切れ端をてちてちと舐めるように食べると満足げにその場に休まる。
膝の上が温かい。]**