【人】 子天狗 茅[どれだけの時間が経ったろう。 決して小さな村というわけでもなかったと思うが、その割に終わりは割合あっさりしていたかもしれない。 子天狗が、と、と、と大地に波紋を残す。 じゃり、と砂を踏むような音がして、幻覚が霧散した。 後に残ったのは、死屍累々。 そしてその真ん中に座り込む、『お嬢さん』の姿。 真っ白だったはずの着物に、誰かの赤を浴びて、がたがたと震えていた。 その眼前に子天狗がしゃがみ込む。] どうしたの? “お嬢さん”? [はじかれたように顔を上げ、『お嬢さん』は怯えたように、後ずさった。 子天狗は、まるで心外だとでも言いたげな顔をする。 ついと近寄って、その冷たくなった両手を握ってにっこり笑ってあげた。] (46) 2021/07/01(Thu) 0:07:20 |