【人】 家族愛 サルヴァトーレ>>34 マキアート 君が照れくさそうな顔をする度、男はいつも眉を下げた。今も同じようにそうして、幼気な我が子を見るような表情をそのかんばせに浮かべている。 指の長い、大きな手が、ゆっくりとした動きで君の頭に伸びた。 「いいとも。謝らないで、僕のカンディート」 「手のかかる子ほど可愛いとは言うけれど、手のかからない子だって同じくらい気にかかるものだね。何か困ってることはない? 君は少し、従順すぎるから」 整えられた髪を崩さないように、注意深く撫で付ける。まずは揃えた指の腹で。それから、曲げた指の背で。 仕事上がりなら少しくたびれているだろうか。それともプロなりに、清潔な姿を保っているのかもしれない。労うように、慈しむように、見下ろす視線。 そんな保護者然として落ち着いた表情はしかし、君の提案で明るい笑顔に変わった。 「いいの? 勿論! 大歓迎だよ、一人は味気ないからね」 「君の行きたいところに行こう。祭りでも、カフェでも、バーでも、なんでも。どこでも」 (47) 2022/08/10(Wed) 1:14:57 |