【人】 かれがれ ユメカワ【廊下】 >>46 ライカ 教室の中から、足音ひとつ。 弱々しく名前を呼ばれて振り向いた先。 「……夏彦」 眉尻を下げて君を呼ぶ。 最後にまともに話したのが、あんな形になってしまって。 こうして顔を合わせても、互いにぎこちなくて。 だからどうにも、こんな状況である事にかこつけたように。 厚かましく言葉を吐いて、手を差し伸べるのは憚られたのだけど。 「一緒に戻ろう。きっと皆、待ってるから…」 それでも、今にも泣き出しそうな君を放っておけなくて。 片手に握っていた金属の棒を壁に立て掛けて、 その場から一歩、踏み出して。空いた片手を君に差し出した。 思えばいつも──君に水を向けるのは、自分の役目だった。 (47) 2022/07/08(Fri) 13:09:52 |