【人】 死刑囚 清浦 和人[気づけば港まで来ていた。 逃亡の手段としては悪くない。 船ならば寄港先で降りることもできる。船内には身を隠すところもあり付け入る隙は多い。 時折見かける警察官の目を掻い潜り、雑踏に紛れる。 この先のプランなんてものはない。 逃げる隙があったから逃げた。 そもそもここまで生きてきた中で計画性なんてものは自分には無縁のもの。いつだってその場の欲と勘で生きてきた。 その成れの果てが死刑判決。 強盗殺人、強姦、放火ほか16の罪状を持って極刑となった。 それはいい。 いつかはそうなると思って生きてきた。 ただ、納得がいかないことが一つ。 『計画性をもって犯行に及んだ』 計画性? そんなことができるなら自分は今こんな風にはなっていない。] (48) 2020/07/11(Sat) 8:05:43 |