【人】 虹彩異色症の猫 んなぅっ。 [ 上衣を着るように、胴を包む形のハーネスであるから、食い込むということはないが、紐の遊びの限りに駆け出せば、勢い余って転がっている。 不平の響きの鳴き声を上げれば、澤邑が近づいた分また駆け出しては足止まる。 そのうちまるで澤邑が邪魔しているとでも言いたげに、振り返り、んなぁ、と鳴いた。 暫くするとどうも一定の距離しか進めないことを理解したようで、歩んでは立ち止まり、歩んでは澤邑がちゃんと着いてきているか確認するように振り返る。 それでも例えば塀の向こうを走る車の警笛、子の騒ぎ声、茂みの物音>>47、そういった慣れぬものに反応しては駆け寄ろうとしたり逃げ出そうとしたりするので、白い躰は何度か土の上に転がった。 疲れたのかやがて蹲った躰を抱えあげられると、湿らせた布で躰を拭われるのも四足を丁寧に拭われるのもされるがままにしていた。されるがままにしていたが、んな、んな、と、一丁前に文句に似た鳴き声を上げている。 それも小さな口の中でもごもごとした響きに変わると、そのまま澤邑の膝の上で眠ってしまった。**] (48) 2022/04/10(Sun) 19:40:16 |