【人】 鳥葬 コルヴォ【港の埠頭】 >>44 フィオレロ 「ああ、いいね。 海に突き落として、そのまま沈めてくれたらきっと 俺の悩みも、あんたの悩みも幾らか解決するんじゃないですか」 やはりと言うべきか、乾いた笑いと共に並ぶ言葉は淀みなく。 帰らない鳥の行く末を追う事はせずとも、 その視線の先、続く言葉が指すものはわかっている。 「他者を特別嫌いに思った事が無い。 無関心なら、同じではなくとも、そう変わらないでしょうよ。 そうでないなら、違いますね。」 あんたの思想は知ったことじゃないので、同じかは知りません。 そう言いたげに、煙草を持っていない方の手を軽く揺らした。 「それにしても、随分今更じゃありませんか。 いつからそんなに面倒臭い人になったんですか? あんたの事は、前からそう呼んでいたじゃないですか。 ただの掃除屋ごときが、呼び捨てになんかできませんよ」 前からそう呼んでいた。それは確かな事実のはずで。 けれど仕事の外では、そうではなかった。 つまりこれは、仕事の外である今は通らない理屈でしかない。 何よりも、面倒臭いなんて、人の事を言えた義理ではない男だ。 (49) 2022/08/10(Wed) 1:54:19 |