【人】 門を潜り ダヴィード>>43 イレネオ 男もまた、それを言葉にできるほどの語彙を持たなかった。当たり前にそこにあるものをどうにか大切にするのが精一杯で、それらはいつも失われてから名前を与えられた。 「まあ……それなりに」 それなりに。 一人で済ませる時ならば、食事用とデザート用にそれぞれ買って帰る程度には。 美味しいものを食べるのは、好きだ。隣に誰かがいるならなお良くて、いなくとも誰かの笑い声が聞こえる場所がいい。 「おつかいくらい任せてください。 泣いて名前を呼んだりしませんよ」 フレーバーの選定も任せてもらおう。 さっぱりとしたもの、甘いものの2種を買ってきて選んでもらうのがいいか。 そんなことを考えながら小走りで商店街に走っていった男は、5分と経たないうちにレモンのジェラートとチョコレートのジェラートのカップを貴方の目の前に差し出すだろう。 #商店街 (51) 2023/09/12(Tue) 13:38:57 |