【人】 欠けた星 スピカ>>@10 ブラキウム ほとほとと落ちていく涙を見たところで女は一切同情しなかった。 「心配してくれて有難う。でもね、心配するくらいなら最初から怪我させるような危ないところで鬼ごっこなんてしちゃいけないわ」 女はハンカチを上着のポケットから取り出した。 「これが私という大人のやり方よ。そして、ついでに教えてあげる。 貴方が大人になりたくなくても、嫌でも時間が私たちを押し流して体だけでも大人になっていくのよ。だから、時間をもっと有意義に使いなさいね」 傷つけるつもりは無い筈なのだが、いかんせん容赦がなかった。それが当然だとばかりに大人の非情さを叩きつける。 遠慮なく貴方の顔から自分の眼鏡を奪った後、少女の肌を濡らす涙を拭こうと手を伸ばす。 どこかで貴方に拒否されなければの話だが。 (52) 2022/01/16(Sun) 16:35:18 |