【人】 東天[何代か前は女であったと言う。 先代は左の義肢を手袋で覆っていたと言う。 代替わりの時期もまちまちで、予告も報告もなく、 ただ全ての認識は見た者に委ねられている。 変わらぬのは、その背丈、髪艶、衣の色。 演目も基礎は変わらず、ただ演目は舞手に聞かねばわからない。 各地を旅する故に、恐らくそれは榛名に元からあるものではなく、 だが、何十年と"彼"が舞うものだから、榛名の祭りのものとして馴染んでいた。 舞手により細部の違いや、得意とする演目に差異はありはする。 例えば──いつかの代は片足が粗悪な義肢だったお陰で、跳ねるのに苦労したと聞いている。 面から伸びる紐の房が結ばれた髪へ交じり、 体が翻ればまた離れていく。 出会っては別れを繰り返して、次第に舞いは終演へ。] (53) 2022/04/10(Sun) 22:30:17 |