【人】 光学迷彩 もも[『わたしは壁。』] [祭の騒ぎが一段と煩くなる。これからも秒針を刻む毎に賑わいが増していくのだろう。暑さに比例する蝉の音の様に。いつもは後ろの教室の中にある時計、その針の動く音さえ聞こえるくらい静かだというのに…。賑わいに混じるのはひたひたとした雨の音だけだ。] [目を開けると、いつの間にか目の前の壁はチラシで着飾られていた。薄鼠色の壁面には地面と平行に貼られた複数枚のチラシ。セロハンテープで四隅を貼り付けられている。赤緑黄にプリントされたB5サイズの用紙に色々な組、部活の出し物が書き込まれている。駄菓子屋、お化け屋敷、射的、喫茶店…コスプレ喫茶?変わったものもある。特に喫茶店のメニューにあるタピオカミルクティは興味も少しは湧くけど…足の重さに勝てる程でも無いかな。] [それにしても、やっぱり、この壁の無駄に余ったスペースには目を留めてもわたしに目を留める人はいなかったね。わたしもわたしで、チラシを貼る人たちには全く気づかなかったけど。よっこらせっと立ち上がりつつアイスレモンティをストローから口に含む。ズズーっと、パックの底が音をたてた。] …やっぱタピオカくらいは欲しいかもっスね? [カーディガンのポケットに手を突っ込みながら、壁に貼られたチラシを品定めした。*] (53) 2020/06/14(Sun) 15:39:30 |