【人】 傭兵団長 ダイゴ 『か、勘弁してくだせぇ!生魚は目の前に店員がいてどうしても取れなかった!店端にあるコイツでもなんでも、腹が膨れるならそれで良かったんだ!』 [猫はまるで口元だけ人間のように、人間の言葉を喋りだす。 その口振りには当然覚えがあった。もう少し離れた地で露頭に迷っている窃盗の常習犯だった。とはいってもやることはコソドロで、捕まえてはヒンヒンと情けなく泣くような奴で、誰かを手に掛けた、などという話は聞かない。 落ちた瓶を拾い上げれば、市場でも活気ある店員が地元でもそれなりに有名な、鮮魚店>>1で扱っているオイルサーディンであることの確認が取れる。酒好きな同僚達が食卓によく並べていたことを記憶していた。] 職を手にしたのではなかったのか? 『い、いや……そこがたまたまその、劇場の裏方要員でな、キャストのなんだ、色んな魔法を裏から見てるうちに「こいつは使える!」って思っちまって……へへ……』 [乾いた笑いで誤魔化そうとするそいつは、どうも反省の色が見られない、普段から寄せ気味の眉の皺をさらに増やして睨みつければ、ヒ、と男は小さく悲鳴をあげ、次いでみ、みゃぁ、と猫撫で声を出した。単刀直入に言えば中身を知っているので気色悪い。 しかし、長い沈黙のあと、ふう。とため息をつく。] (54) 2021/04/15(Thu) 6:06:26 |