【人】 かれがれ ユメカワ【廊下】 >>52 ライカ 遠慮がちに手と手が触れ合って、 これまでずっと取れずに居た手を、壊れ物みたいにそっと握った。 「…………」 殆ど無意識に──以前のように手を繋ごうとする動きは。 きっと途中で固まって、実に半端な繋ぎ方になったんだろうな。 「仕方ないよ。 冷静でいられなくたって…多分、それが普通の事だから」 「だから……少し安心したんだ、俺」 知人の死に動揺するのは、まったく普通の事だから。 努めて冷静であろうとする事だってきっと正常なのだろうけど、 不安を無理に心の内に押し込めてしまったり、或いは。 すっかり割り切ってしまえる事の方が、何だか恐ろしい。 夢川が取り乱さずに居られたのはきっと、現場を直視していないから。 白間だって、連絡から察するに幾らかの動揺はあっただろう。 栗栖や麻弓であれば──あの光景を客観視する事ができただろうか? 詮無い考えに耽っていても、仕方ない。 だから今は君の方に意識を向けて、これまでのように手を引いて。 きっと少し前を行く二人の後に、ふたり続いて行った。 (55) 2022/07/08(Fri) 22:27:23 |