【人】 矢川 蛍[そんな訳で、その日の晩は また色んな感情を消化するための作業祭りだった。 刻んで、刻んで、刻んで。 炒めて、冷まして、混ぜて。 捏ねて、捏ねて、捏ねて。 下拵えをして、焼き菓子を作って。 そして翌朝、続きを作る。 主に作っているのは自分のお弁当。 だけどチラッと欲が湧いて、二人分。 ううん、……結局四人分くらい? 両親と私とでそもそもが三人分。 ハンバーグにブロッコリー、いりどりにミニトマト。 それと卵焼き。我が家の卵焼きは甘い派。 胡麻塩とゆかりご飯のおにぎりが一つずつ。 タッパーに詰めたのはごめんなさい。 急な思いつきと衝動だったから。 だから、翌朝の荷物にお弁当が二人分。 自分の分と、隆司さん……が迷惑じゃなければ。 夜勤の両親はまだ帰ってきてない時間、 二つの包みを持って顔を出す。 隆司さんが、きてくれてたなら 「お弁当……、要りませんか?」 そんな風に聞いてみるんだ。**] (57) 2021/03/03(Wed) 8:01:49 |