【人】 隻影 ヴェレス[学者としての好奇心で調べた限りでは、 『仏』とその信徒以上に深い慈悲を懐く存在を 如何なる宗教にも見出す事が出来なかった。 少年が語ったのは、此度亡くした母が 元は遠く、宗教も異なる土地の生まれだったこと。 母が懐かしむ様な文化的特色はこの島に存在しないこと。 そして即ち、母子共に自らの神から遠ざけられ この島以外の世を知らずに生きていたという事を 細々とした語り口で明かすのだろう。 今際の言葉すら耳には届かなかった怠惰の罪を、 赦されたい想いが強かったのかも知れないが。] [腕に巻かれたままであるその呪布が、 この島の摂理に対する裏切りの証であるとは 知る由もなく────……**] (60) 2022/11/05(Sat) 7:41:04 |