【人】 道具屋 フルリー・アルジャーノンそんな帰り道だったかな。 詩曲がね、どこかから聴こえてきたんだ。 そう言えば母もそれが得意で、その日、改めて気付いちゃったの。 優しい調べは、弟や妹達にしか向けられて居なかったんだって。 無性に悔しくて哀しくってね、わたし、気付いたらその吟遊詩人の前に仁王立ちしてたの。 わたしだけの、うたをください。 [もう泣くのは最後にするから、何も欲しがらないから。] そう、お願いしたのよ。 相手は吃驚していたけれども、持っていた楽器を爪弾き始めてくれて、わたしね、今みたいに膝を抱えて踞ったんだ。 ……ありがとう、もう、泣かないって。 それから、貰った詩曲を何度も頭の中で諳じたわ。 あのときの吟遊詩人さん、フェリックスに似ているような、そうでもないような、って話でしたっと。 例え違ったとしてもフェリックスは凄いと思うけれどもね、人々を生活や自然を見て、それを例えるって難しいし。 [例えばそれが、線引きされた向こうから見守っているのだとしても] あなたが側で安心して詩曲を紡げるような、強くて魅力的な人になりたいからさ。 …あかんうちの、側におって? ……なんてね!!! [一方的に語りまくったが、久々に方言がでたのが照れくさくなって、くしゃーーし返して、逃げたのだった**] (61) 2021/08/17(Tue) 22:36:24 |