【人】 花火師 ヴェルク>>60 キエ 傾く体を、あの日のように支えることは無い。 君に触れる手は、君の手と重なるものだけで。 続く歌に、僅かに目が細まる。 きっと終わりが近いのだろう。 現に君の 殺意 に反して、首に添えられた手は動きやしない。以前に触れた際には感じた熱も、今は失いつつある。 それが嫌で、君の手に重ねた手に僅かに力が込もる。 分かっている。……だから、早く。 殺さなければ。 >>59 シェイド 君に預けた銃を奪おうとキエの手に重ねた手を外したところで。 ──ゴン!と己の頭に衝撃が走る。 その行為の意味とかそういうものはあまり理解出来なかった。 ただ、君の叫ぶ声が耳に響いて。 だからそれが銃だと認識出来ても、種の存在に気付けない。 何かを言う前に君が手を引くから、体はそちらに傾く。 キエは大丈夫だろうか。このまま倒れたり。 いや、それよりもこの状況はどうすれば。分からない。 狂気に侵されていたはずの思考は、君の行動で疑問で満たされた。 男は、動けずにいる。上手い言葉も言えないまま、目を瞬かせながら。 (62) 2022/06/23(Thu) 3:40:17 |