【人】 灯守り 芒種息が弾んでいる。 走ってきたでしょう?いけないこね。 ……探しにきてくれたの? [ これっぽっちも責める気のない甘ったるい猫なで声で 甘やかすように指摘して 抱きしめた腕を緩め、顔を覗き込む。 頬を撫でて、視線を交えて、うっとりと目を細めた。 愛されるべきいとしい子。 大切にしたいだいじな子。 ひさしぶりね、とわたしが向けた笑顔は 彼女の母に教わった慈しみと同じには出来ずとも 似た何かをうまく込められているだろうか。 きらいなわけじゃない。 上手くあいしたいとおもう。 散々冷やした手のひらに汗がにじむ。 わたしは何をやっても不器用で うまく出来ると思えなくて、いつだって怖い。 いっそひと思いに嫌われてしまえば、楽になれるのに。 あなたに幻滅されることが。 嫌われることが、いつも、怖くて、怯えている。 **] (63) 2022/01/19(Wed) 15:50:38 |