【人】 死神のジン ナディル連れていかれた先は この地には不似合いなほど豪奢な宮殿で 死して尚、贅を尽くす業に舌を巻かざるを得ない。 上等の蜂蜜酒と桃の香のシーシャ。 とりどりの果物と気の利いたメゼ。 地上よりも遥かに入手が難しい筈の品々まで いったい何処で手に入れてくるのやら、 召使いが何くれとなくシャフリヤールの世話を焼く その傍らでナディルも甘い煙を味わう。 ──貴様なら俺の望みを叶え、 恵みをもたらすことができるのかな…? 本気にするな、と笑いながら、酒を呑むたび シャフリヤールはそう問いかける。 恐らくそれはナディルにではなく、自分自身に。 そのことがわかっているから、 ナディルも笑みだけを返して、ほうと煙を吐く。 (66) kintoto 2021/09/18(Sat) 17:41:23 |