【人】 陽光の元で ニーノ>>63 カンターミネ うと、うと、うと。 少しずつ船を漕いでいた男はもうちょっとで眠りの底に落ちてしまうところで──けれど唐突にぱっと顔を上げる。 重たい瞼に言うことを聞かせるように、何度か瞬きを繰り返してから。 「…………」 顔を向けた先には少々距離の開いた場所で立ち尽くす人影。 こちらは貴方に見覚えはない、ないので考えていた。 たまたまここを通った誰かか、それともスラムで生きる子どもか。 にしては服装が小綺麗なのでやはり前者か、というか子どもというには体付きが……いや、どちらにせよだ。 「……ごめん、猫苦手? でもこの子が先にここに居て、オレが邪魔しに来ちゃって。 だから場所代支払ってて〜……ええと、そう……」 笑みを浮かべてくれてはいるが、自分に、というよりかは子猫を警戒しているようにも見える。 なので無害ですよを伝えようとして口を開くも、先ほどまで寝惚けていた頭は上手く働かない。 「…………だいじょうぶ。 噛んだりしない、オレも……安心して、通っていいよ」 オレも……?それはそうだろ、何言ってんだ……。 チョイスミスに気が付いたのは言葉にしてから、適当に流してくれたらいいなとぼんやり思っていた。 ちなみに子猫はまだ元気にお食事中。 #路地裏 (67) 2023/09/12(Tue) 20:06:18 |