【人】 蒼鉛の魔術師 ヴィスマルト[家事は多少おざなりになっていても、 仕事については、真面目に取り組んで来たつもりだ。 筆不精の自覚もあるが、私だって、 用があればペンくらいとる。 心配の必要はないだろうが。 私も手紙をしたためた。 薬の調合に必要な条件を考えれば、 向かう先はあそこだろうと 頭に思い描いた地図から、一つの名前を拾い上げて。 紙に記すのは、落ち合う場所と、大体の日時など。 それから よろしく頼みます と一言書き添えた、簡潔な手紙を出した。 こちらに秘匿事項はないものの、 連絡事項は速やかに。そう思って封をした、 蒼鉛の酸化膜による虹色も、己の魔法も。 アガーテ様とは並ぶべくもないが、 私の手によるものだという事は あの方ならわかってくれるだろう。 あの女は、今頃。 不肖の弟子と組む事に、 何を思っているのだろうか。]** (67) 2022/03/27(Sun) 6:02:24 |