【人】 書生 茅[ヒトの身に、天狗さまの妖力は過ぎたものだった。 だから青年の身体はそれに見合わんと、変わらんとするのだが…まだ、まだ。足りない。 巡る妖力が暴れ、扱いを知らぬ青年は振り回され……遠くの声を、音にならぬ声までを拾ってしまう。 いっそ、憎めたらよかった。 憎むには、愛しすぎた。 呪えたら、よかった。 呪うには、情が湧きすぎた。 生まれついての化生であれば、こんなにも青年を苛むことはなかったろう。 ヒトで、なければ。 ヒトで、なくなれば。 ざわりと、青年の背中で黒い靄が渦巻く。 欲しいなら、奪えば良い けれど青年の欲しかったものは… 欲しかった、ものは……] (70) 2021/06/23(Wed) 20:15:37 |