【人】 灯守り 小満――小満域―― ――やぁ、やぁ。ごめんってば。ちょーっと立て込んでてさあ。 うん、そう。やだなぁ、サボりじゃないって。 あ、新しいお茶? いいの? じゃあもらっちゃおうかな。 [どこにでも出放題とはいえ、いきなり往来の真ん中や民家の中に出れば大騒ぎだ。 ということで、なるべく人通りのない広場や静かな森の中に出てから歩きで向かうのだけれど、その間にも家々から人が顔を出しては、小満さま小満さまと声がかかる。 小満域は本人の性格に加えて当代の在位が長いこともあり、灯守りと住民の距離が極端に近い。 かかる声も最近とんとお見限りじゃあないかとか、あっちの赤ちゃんへご挨拶かいとか、またお仕事溜め込んでらしたんですかとか、店の品を持っていってくれとか、そんな気軽なものばかり。 明るい騒ぎを聞きつけて新米母子が外に出てきたら、きょとんとしている赤子に手のひらかざし、健やかなれと未来を祈る。 本日の言祝ぎはふたり。それを終えたら、最後に『もうひとつの自宅』に顔を出そう**] (71) 2022/01/16(Sun) 4:06:28 |