【人】 隻影 ヴェレス[目を閉じた、少年の表情が微かに曇った。 それは単なる懺悔の過程と受け取られても不思議でない。 自らの行いと気持ちに整理が付くことは暫くなさそうだが それでも渦巻いていた心は少し鎮まった。 心の底から死を悼む他者の存在を必要としていた から。]……母もまた、島で過ごす長い歳月の中で いつの間にか自らの神に祈る事を止めました。 (────其の理由を私は悟っている。) 私が幼い頃は毎日の様に教義を話して聞かせたのに。 母がそれで天に召されず果てたのならば、 それはこの島がそうさせた事なのでしょう。 …………この、國そのものが。 [幾つもの思惑が混じり合う、黄昏の惨劇。 その幕開けは刻々と近付いてきている。 ・・・・・・・・ そして────少年も それを知っている 。] (72) 2022/11/05(Sat) 21:11:46 |