【人】 砂の民 スティグ[だけども… 今なら自分も、今の友人とでも、昔のように一緒に沢山のうまい酒を飲める気がする。 そして、友人もそれならともっと沢山欲しがってくれるのでは、と思う。 友人が、昔の酒場で一緒に過ごした夜を今も覚えていてくれているのなら。 つまり…これを分け合うだけでは足りんかも。 自分も楽しく飲むなら猶更だ。 さっきの店員も2杯作ろうかと言ってくれていたのに、今更うまい酒の味を思い出してしまった自分が憎い。 いや、彼と飲んだ酒もうまかったから、これは彼の責任でもある… 謎の責任転嫁を始めようとした時、机の上の写し紙に挟んだままの青い薔薇の花びらが目に入った。 そういえば、店の外に立っていた、胸元に薔薇を挿した彼も先ほど、店内で青年に料理を運んでいたようだった。 やはりこの店の店員だったのだ。] すいません、お酒を貰えますか [店内をぐるりと見回し、 彼の姿が目に入れば、どこか軽い気持ちで声を掛けた。]** (81) 2022/05/28(Sat) 19:38:37 |