【人】 黒崎柚樹[ああもういっそ、あまりに遅くて笑えてきてしまったかな。] ふふ、はは、おっそ……!おそい……っ! [けらけら笑いながら漕がれていく白鳥はもたもたと、木々の隙間から陽光がこぼれ落ちる頃合いの"スタート地点"に辿り着き。] え?魚、いるね……ていうか、水、すごい綺麗だね……? [湖の透明度なんて、たかが知れていると思っていたけれど、水草がたゆたう様や、小魚に光が反射してきらきらとした輝きが滑っていく姿が容易に見て取れた。 真夏の陽気だったら泳いでしまいたいと思っただろうほどに、綺麗な水。 両手で抱えるほどの大きな魚の影まで見えて、武藤、あそこあそこ、とスワンの中からあっちを見たり、こっちを見たり。しばらくわちゃわちゃしていたかな。 勢い、意図せず武藤の側に身体を押しつけたりしてしまって、そのままキスしたりもしたのは……あま、恋人同士、なので。なので。] ん。とりま全力で漕いでみようか。 [スワンボートの最高時速はせいぜい6km/hくらい、大人の早歩きと同じくらい。そんな現実をこの時はまだ知らないまま、対岸まで、スワンは長閑に湖面を進んでいくのだった。 ……全然、"爆走"とはほど遠かったよ。くやしい。*] (83) 2023/03/12(Sun) 10:03:12 |