【人】 子天狗 茅呪 [呟きは鬼火を生み、骸を焼いた もしかしたら、息の合ったかもしれない身体も焼いた 『お嬢さん』だけは、何故だか燃えなかった けれどそれを、茅はもう見ていない 不浄を残さぬように 他のヒトを腐らせぬように 生ける者のいなくなった村 けれど山裾には他にも村がある 害されなければ殺さない絶やさない 子天狗は歳を取らぬだろう 主人たる天狗さまがそうなのだから どれだけの時が過ぎたとて 刹那の後の永い時を、山神さまたる天狗さまと 生きるのだ 望むと望まざるとに関わらず その責を全うしてきた天狗さま 作物が育ちにくいその土地に力を与え、荒れやすい天候を穏やかにし ヒトとの共存を保ってきたその人が…… 愛おしい だから、嫁ぐのだ その力分け与えられ 共に、永遠に────、] (83) 2021/07/01(Thu) 22:23:55 |