【人】 凍剣士 スピカ[「ばか」と、罵りを受ければ僅かに微笑んで、お返しにそっと彼女の額に口付ける。 堕ちてしまった彼女に寄り添う事が、馬鹿で愚かな事であるなら、自分は愚かでいい。 ――彼女を一人、このまま暗い底に置いていくぐらいなら、自分は彼女と共に、どこまででも堕ちて行こう。 彼女を見捨てることに比べれば、如何に安い代償であろうか。 直後、彼女が発動させたトラップを、抗うことなく受け入れる。 媚薬の霧と、下腹に尋常ではない昂りを感じる。おそらく、淫紋の類だ。 それは強い喉の渇きにも似て、イルの身体を貪りたくなる。 もし、彼女と目が合ってしまったのならば、なおさら。] …いいんですか? [『真摯に我が子を望まぬ限り〜』と、先ほど彼女が口ずさんだ言葉。 それでも彼女が行為を望むという事は、つまりはそれすら関係のないところまで堕ちてしまいたいという事――… そこから先は、言葉にはしなかった。 イルは、自分と共に堕ちて行く事を受け入れてくれている。 彼女の気持ちを、無碍にしたくない。 彼女の望む通り、休憩室へと歩みを進める。 ただただ、二人で快楽と怠惰に溺れる事の出来る場所を目指して。] (85) 2021/05/05(Wed) 16:53:58 |