【人】 天狗 さぁて、そろそろ用意ができたころじゃろう 此度の嫁を迎えに行くか [山の頂近くに構えた住処から出て、ばさりと先代から奪った羽を広げる 歩いていっても問題はないが、この羽音が「天狗が来た」という合図になる いきなり現れるよりはよかろうと、天狗なりの気遣いだが ひと際大きく羽音を立てて洞穴の前に降り立つ 周囲に人は見当たらず、中にわずかに気配を感じれば ゆっくりと踏み入り、そこに座り込む白無垢へと] お前が此度の嫁か……? どれ、ワシにその顔を見せてくれんか? [正面に屈み込み、懐から取り出した小さな行燈に念で火を灯して白無垢を照らす 天狗は夜目が利くが、嫁はそうではないだろうから] (87) 2021/06/16(Wed) 3:39:21 |