【人】 木峰 夏生[ メッセージを送ったとて、いつものように返信はない。 わかってはいるけれど、時折ちらりちらりと スマホを確認しては、ふ、と息を吐いて。 追撃するみたいに、気持ち悪いうさぎが ちゅー♡ ふざけたスタンプを送ってやった。 最後にメッセージくれたのって、そういやいつだっけ。 そんなことを一瞬考えたけれど、 確認したところで虚しくなるだけなのは 百も承知なのでやめておこう。 仕事で留守がちな両親のもと、七歳下の弟の面倒を 見るのは長い間俺の役目だった。 いやだったかって?そんなわけない。 俺のあとばっかりついてきてさ、 なんだって俺の真似して、 たまに友達と遊ぶ約束して帰ればやきもちやいて 拗ねて暴れて…… そりゃあもう可愛くて。 そう、可愛くて、可愛くて。 湧き上がる感情が堰を越えて名前を変えて、 ───── これ以上は、ダメだと悟る。 (88) 2021/07/02(Fri) 10:22:13 |