【人】 宝石ディーラー ユーリ・タカノ なるほど、箱の中から宝石を…ですか。 逆に箱の中の僕たちを見つめているのは、星々というわけか。 素敵な体験になりそうです。 [我知らず苦笑いのような表情になった。 壮大な空間で、閉じ込められた箱の中で過ごす自分を想起する。 皮肉を込めたわけではないのだ、決して。 ただ、ほんの少しだけ少年の頃を思い出しただけ。 薄暗い部屋の中から青空を見つめていたあの頃を。 ──鞄の奥にはパンドラの箱がある。 今日も今日とて肌身離さず持ってきた商売鞄の中に それは潜んでいる。 依頼人が死ぬことで開錠する>>54 そんな設定の遺言状だとは周囲の誰にも聞かされていなかった。 母からの手紙は開かずの封筒、今もそう思い込んでいる。 さらにいえば父から支給された商売鞄にも金色の鍵がついていて 母の遺言状の封印と、鞄の鍵の制作が 奇しくも同一人物の手になるもの…らしいということは 想像だにしていなかった] (88) 2021/12/26(Sun) 12:19:51 |