【人】 第11皇子 ハールーン……イスマーイール…… 「アンタル、それ貸せよ。茶ァ淹れてくる ハールーン、オマエも来い。気になんだろ」 [自分とは違う白めの肌にオレンジの髪。歳は同じのその弟は、あの日毒殺を仕掛けてきた人物──第12皇子イスマーイールだ。 アンタルが苦笑しつつ呼び止めるも、さっさと給仕室へ向かっているようだった。ダレンに彼の事を口頭で簡単に紹介した。過去に何をされたかも含めて。] 「──おい、早くしろ。」 [彼の言う『気になるだろ』とは、自分があの日から頑なに出された食事に手をつけなかった事に由来するんだろう。 "誰の手を通ったものか"をひたすらに気にしていた。もっとも、ここに居てそれを気にするのは当時の居住人数を考えると不可能で。それでノイローゼ気味になりながら別宅に逃げたのだった。 ──少し、懐かしく思える程度には色褪せた記憶らしい。否、隣に居てくれる人のお陰で心強くいられるからかもしれない。 ダレンに目線を送って、返答する。] ……いま、行くよ! * (92) 2021/04/22(Thu) 14:18:43 |