[通された座敷には、澄夜の両親、祖父が揃っていたろうか。

門弟なども参加するものかはわからないが、絶対的な発言権があるのは先代の祖父でも、完全にアウェイというわけではないと知らされていたのは少し気が楽だった。

それでも、澄夜の両親や姉に頼るではなく、己が話をつけなければいけないことだとは思っている。]

　この度はお時間いただきありがとうございます。

[畳に膝をつけて頭を下げると、暫し逡巡してから名前を名乗った。]

　………藤吾圭と申します。
　
　ですが、この名前はもう使っていないので、
　東堂圭吾でお願いします。

[家の名前を出せばまたややこしくなるかもしれないし、或いはスムーズに進むのかもしれない。

迷惑をかける気がないというよりは、頼る気もないので、どうせ調べはつくだろうことは先に告げておいた。]