【人】 1年生 朝霞 純>>93 [高校を卒業する前、私は両親に大学には行かなくていいよ、と言われていた。 “少なくとも、純が苦労しないくらいの貯金は貯めてあるから、好きなことをして暮らしなさい。 純は何があっても私たちの子供だから、一人立ちが難しかったら無理せずに頼りなさい。” それが両親の言葉だった。 私はそれで、両親の気遣いの正体に気がついてしまった。 両親のいう子供、とは赤ちゃんのことだ。 私は二人の中で、食べるものも、着るものも、住むところも面倒をみてあげなくてはならない存在になっている。 だから一人立ちはしてほしくないのだ、赤ちゃんを一人にするのは心配だから。 私は両親の本意を悟って悲しくなってしまった。 確かに世話のかかる子供だ、それは認めるけれど。 …せめて赤ちゃん扱いはされないようにしたいな。 そう決意して、心配する両親を、もし両親がいなくなってしまった後の万が一の社会生活のためだと説得して、そうして大学に入学したのだ。 他の人と同じように一人前になれなくても、少しくらい成長できたらいいな、なんて願いを抱えながら。] (94) 2022/09/06(Tue) 18:54:53 |