【人】 墓守 トラヴィス>>92 ルヴァ 「別に語ることはないかな」 窓を開けて吹き込んできた風が室内の手紙を机から落としたとして、風を説き伏せられるとは思っていない。もちろん、そこまでは愚かではない。 「ただ、ふつうの人間は、風を説得はしないぶん、風の要求を察しようとこともないだろうなって思うだけ」 どうしてわからないのかという苛立ちは、風にしてみたら当然なのかもしれないけど。 まあだから、これは、風が避けることになるか、障害物が先に倒れるのか、といった、競争でしかないよなあ、と思うわけだ。どちらも譲る気がないのだから、仕方ないよね。 「少し眠いね」 昨日夜更かししたんだ、と、彼は瞬きをしてそれに耐えた。 (95) 2021/10/12(Tue) 1:33:57 |