【人】 きっと教育係 キネレト[きっと放っておけば明日の朝まで 一晩中続けようとしてしまっただろう真面目な会話は、 彼の機転のおかげで漸くひと段落した。 勧められた二つ目の茶菓子と君の煎れてくれたお茶とともに 君がくれた言葉たちを味わい尽くして、 心躍る宿題の提案に二つ返事で微笑んだ。 結論を急がず待とうとしてくれるところにも、 僕は随分と救われているように思う。 こうして『また今度』が積み重なってゆくのも楽しい。 現在進行形で僕は君に大事にされていると感じるけれど、 君がどんな時に大事にされていると感じると思うかは 今すぐには答えられなさそうだった。 誰にも見せたくなくて隠し続けるうちに 誰かに気付かれることさえなくなった弱い面を見せても、 君は嫌がらない。憐れむでも変に同情するでもない。 思えば一年前のあの日もこんな風に 遠慮して辞退しようとした僕を強く抱きしめてくれて、 気付いたときには自分でも驚くくらいに 心が君に全部持ってかれていた。 ひょっとすると君はきまぐれなノリで、 そうしてくれただけだったのかもしれない。 それでも確かに僕にとっては救いだった。 君に抱きしめられると僕は ここに居ても良いのだと、もっと言ってしまえば 生きていても良いのだと認めて貰えているような気がする。] (98) rinto 2021/01/05(Tue) 22:04:05 |