【人】 涼風 梨花― 船内にて ─ [まずは真っ直ぐ、宛がわれたS室へと向かう。 恐らく使うことはないだろうリビングに鞄を置き、 持参した着替えをクローゼットへ映した。 クルーズ船に乗った時の習慣のようなもの。 潮風にべたついた髪がやや気になったが、 シャワーを浴びたとてすぐにまた……であろう。 軽く化粧直しだけ済ませ、船内の探索へ。 豪華客船そのものは然程珍しいものでもない。が、 それでも『サンライズ・クイーン』クラスともなれば 早々乗る機会もなく。] まあ、カジノまであるの。 [ボールルームやバーカウンター、レストラン。 何処を眺めても、ごく普通……と言うには躊躇うほど。 そして後悔の目的を見失いそうになるほど優雅で。 "ひとり"で参加する身の上を少しだけ残念に思う。 物憂げな溜息を誤魔化すように、通りに佇むボーイから シャンパングラスを受け取り、薄琥珀色に眦を細めた。] (101) 2020/07/11(Sat) 22:15:26 |