【人】 一匹狼 “楓”[逢いたかった。>>84 その実に嬉しそうな言葉に>>86、彼は思い返す。少し前の彼女の言葉を。 『きっと、お会いできると思っていましたの。』>>61 辺りの人影どころか記憶さえも朧げなこの場所で、彼女は何を信じていたというのか。 ……何か、知っているのだろうか] そうなら会いに来てくれりゃいいじゃねェか。 あいつに渡せば、あんたも見るかと思ってたぜ? [心がざわめくのを感じながら、彼は軽口で気を紛らす。 彼が言うのは、かつて彼女に出会ったときに別れ際に手渡したカードのことだ。彼の勤め先の名前と住所が記された、個人のものではないにしろ名刺のような代物。 それを彼が渡した相手は彼女本人ではなかったが──渡した相手は彼女と共に在る人なのではないか、となんとなく思ってのことだった] (101) 2023/03/01(Wed) 12:51:59 |