【人】 夜の一族 チャンドラ>>101 キエ 月の明かりに照らされて、同じ灯りを纏う今のわたしはただの月。 あなたが教えてくれた 篝火 は、あなたにはきっと必要のないものだと漠然と思っている。あなたに 篝火 を分け与えることよりこの篝火 を大切にする方が、あなたに報いることに繋がると信じている。「嬉しいわ。あなたにそう言ってもらえると」 だから、お話はこれで終わり。 あなたがこれからどうするのか気になるけれど。 もしいなくなったとしても、不思議と寂しい気持ちにはならない気がした。 だってあなたは不思議な人だもの。 またひょいと姿を見せてくれる、そんな夢さえ見せてくれる。 「またお話しましょうね、キエ」 だからわたしはそう告げてあなたに手を振った。 星屑の尾を描きながら、また夜の空を駆けていく。 白い鴉がいなくても、今のわたしはこうやって、1人で夜を駆けることができる。 (102) 2021/10/28(Thu) 0:03:46 |