【人】 ただの ユピテル>>@58 トラヴィス 「劣っている、とかじゃないのよ。 トラヴィスとミズガネは全くの別人で比較しようもないわ。 勿論それは全員に言える事だけれど──わ、トラヴィス?」 抱き寄せられて触れられて、この館の当時なら真っ赤になっていた場面。勿論驚きで多少赤くはなっていますが、それでも随分落ち着いたもので、どちらかと言うと親愛の友人にダンスを誘われた感覚に近いもの。 ただ、貴方の問いに真っ直ぐ応えようと、そのままの体勢で言葉を紡ぎます。貴方がそれ以上深い事をしない、という信頼もここには含まれているのでしょう。 「一番は、私を巫女でなくしてくれたから、かしら。 “ただのユピテル”を求めてくれた。互いに傷があって、共感して。その上で、“互いに支え合おう”と伝えてくれた。 求めて、求められる事も。どちらも可能と教えてくれたの」 「……ふふ。言葉にすると、本当にストレートね。でも、その当たり前の普通が、私もミズガネもなかったから」 ただ、求められる事なら幾らでも経験はあります。 それも“巫女のユピテル”がほとんどで、そうでなくても、求められるだけでその先はありませんでした。けれど、与えたいと。支え合いたいと言ってくれる人が居たから。 「私、きっとヤキモチ焼きだったんだわ。 ひとりの“私だけ”を見て欲しかったの。その感情も、教えて貰った。だから……私も、“あの人だけ”を愛するわ」 (105) 2021/10/28(Thu) 1:55:42 |