【人】 異国の道化師 マッド・リヒターー さて、用事も終わったし引き返すか。 もう一生お目に掛かることもないでしょう。 ドンッ [踵を返した彼の肩が通行人にぶつかった。見回りをしていた王宮の兵らしい。その兵に職質を受けるマッド。帽子や礼装の装飾、世界各国から持ち込んだ呪いや宗教具の類いが気に入らなかったのか?それとも白粉を塗り中性さや妖艶さを演出したメイクが不味かったのか?タナバタじゃないか。異文化宗教や乞食染みた道化を受け入れる覚悟くらいしてほしいものだ。] ぼくは怪しいものではありませんよ。 何なら、証拠をお見せしよう。 バサァァッ [懐から白いハンカチを……しかし、それが一瞬にして20匹程の鳩に変わり空間を真っ白に染めた。鳩の鳴き声や擽る様な羽の感触が、兵、そして通行人達の注意を埋め尽くす。気がつくとそこに、先程まで歩いていた継ぎ接ぎ帽子の姿は無かった。] ー 少しくらいはゆっくりしていこう。 また手配書を回されても厄介だ。 適当に信用を稼いで安全に出国すればいい。 [三階建ての屋根の上、彼は帽子の鍔をピンと跳ねて見せ、にやりと不敵に笑った。*] (105) 2020/05/12(Tue) 13:32:28 |