【人】 受験生 雨宮 健斗[ あの日も、雨だった。 上手く弾けないピアノの音が、雨音に溶けて 透明な不協和音で頭の中で鳴っていて。 そんな中どうした、と問うてくれる声>>98が、 遠くから耳に届いて、大きく息を吐いた。 ] わり、大丈夫、ちょっと立ち眩み… [目を閉じたまま、座り込む。 廊下の床も、壁も、しっとりと冷たかった。 どうにか僅かに瞼を上げれば、同じように 座りこんでこちらを覗き込んでくれている、 異なる色の瞳が揺れる。 しばらくすれば大丈夫だと、伝える前に彼は 足早に場を後にしていた。>>99 ] (105) 2020/11/21(Sat) 23:50:38 |