【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ すると破れた布切れと不規則な黒鱗に覆われた脚が、 それに続いてヒトの輪郭を保った顔が視界に現れる。 血溜まりの如く濁った 瞳 であっても、一度目の当たりにした其の姿を忘れる筈もなく。 吹き込む風に混じる死の匂いは、 彼女が長い長い闘争に身を置いていた事を悟らせた。 ] リヴァイ、お前…… 今晩はまだ三日月の筈──── [ 言い切る前に其れは窓の下枠に脚を掛け、 濡れそぼつ身のまま飛び込んで来た。 寛いだ衣装では一人分の質量以外に抗うものはなく、 衝突した威力に押されるままに後ろ向きに倒れ込んだ。 古びた絨毯から鈍い音が鳴る。 ] (106) 2020/12/03(Thu) 22:08:08 |