【人】 片連理 “椿” ええ。ですから、逢いに来たのです。 [椿はそれだけ、答えた。彼女自身にも、何が起こっているのかはよくわからない。願いがあり、それが叶ったという、それだけだ。 実のところ、楓から受け取ったカードは片割れが大事に持っていた。が、あのあとすぐに、片割れはもう椿については行けないほどに弱ってしまっていた。自分の目の届かないところに一人で行かせたくなかった彼は椿をどこにも行かせず自分の元に留め置いた。それで結局、カードは椿の手には渡らないままになった。だから、彼女がこの場所にたどり着いたのは、一種の奇跡のようなものなのかもしれない。 椿は楓の手を引いて、湖とは逆の方向へと歩いてゆく。特にあてがあるわけでもなかったが、点在する建物の方へと向かう。] (113) 2023/03/01(Wed) 15:31:48 |