【人】 龍之介[慌てて地面に手を伸ばし、提灯にかざせば ぷちぷちとした細かな実が 集まった一房だった。 小鳥が美味しいところだけ啄んで捨てたのか 天敵でも現れて急いで逃げたのか 食べかけのもの。 匂いを嗅ぎ 指で潰して汁を舐めてみれば 淡い酸味と甘さが口の中に広がっていく。 (これなら…!) ミクマリ様が 好んで召し上がられているものと比べれば 食べでがあるとは言い難いけれど… 甘さを足して煮詰めて まんじゅうや寒天などに添えたりすれば おそらく満足していただけるはず。 それには量が必要だと 見上げる梢は、確認できぬほど高かった。] (115) 2021/06/24(Thu) 23:51:07 |