[分かりやすい形式的な婚姻を踏まなくたって、嫁入りはつつがなく完遂される
>>111名前を褒められればまた、嬉しそうに翼が揺れた。
名前だけは、何もかもを忘れて路傍に転がっていた茅が、唯一記憶の向こうから持ち越せたものだったから。
唯一それだけが、本当の意味で己自身のものと、自身を持って言えたから。
]
んふ、
[茅本人が村を潰すのがよかろうと、天狗さまも言う。
>>112青年自身もそのように思っていた。
かつて村へと抱いていた愛の清算に。
憎しみではない。
これも、愛故である。
“ヒト”は、そうは思わないかもしれないが。]