【人】 英 羽凪[その後輩と顔を合わせるのは決まって、曇りの日。 実際、小雨に降られることもあって。そういう日は必然的に、唯一屋根がある入口の扉前で並んで過ごすわけで。 ちゃんと話したのは、たぶんその時。] ……なー。 雨って透明なのにさー なんで雲は黒いんだろうな。 [確かそんなどうでもいい内容だった気がする。 そこから、他愛ない会話はなんとなく続いて。思い思いに過ごす場所はなんとなく隣になって。 たまに勉強を教えてやったり、先輩らしいことをする傍ら。 どうでもいい話で笑ったのと同じくらい、教室では口にしない話をした。姉のこととか、早く就職して頼られるようになりたいとか。 少しずつ縮まっていく距離は、野良猫に懐かれるような微かな優越感に似た嬉しさがあって。遠慮ないやりとりは、口の悪さすら可愛くて。 いつしか曇り空が楽しみになっていたのに。] (121) 2020/07/24(Fri) 0:21:26 |