【人】 ローグ ギュルセル……テンガン。 [遠い異国の名のような響き>>121を、男は静かに繰り返した。 新たな同類の名を覚えようとして。 ケッセルリング家の名を、男が過去に聞いたことはあったかもしれない。 家訓が旅なら、かつて男が各地を旅していたときに同家の者と出会ったこともあるのかもしれない。 だが、男は過去を忘れて封じようとしながら生きてきた。 媚毒に酔った頭に思い浮かぶものは何もなかった] 獣には獣の誇りがあるんだよ……。 おまえが誇りだと思ってるものとは 全然違うかもしれねぇがなぁ。 [“誇り高い”という皮肉めいた言葉を否定せず、男は薄く笑む。 堕ちようが、地を這おうが、その生き方なりの誇りがあるのだと身をもって知るからこその言葉だった] (123) 2021/05/05(Wed) 21:24:17 |